ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
2017年5月22日

長寿の証、亀の粘土彫刻に挑む

レベラションに主品した「萬年亀」
レベラションに主品した「萬年亀」

浦島太郎の亀をつくる

 パリの国際工芸フェア「レベラション」で、ピースクラフツSAGAの展示ブースでは『浦島太郎』をモチーフにした演出を行いました。その浦島太郎に欠かせない登場動物と言えば、亀。伝統的な弓野人形を製作する江口人形店では、展示ブースの要となる、全長45センチメートルの亀のオブジェ「萬年亀」を製作しました。
 開発にあたって、ピースウィンズ・ジャパンはフランスからデザイナーらを招聘。彼らは江口人形店の工房を訪れた際に、型や原型のストックの中から亀の原型を見つけ出しました。「それは尾に藻がついた亀で、藻がつくほど長く生きた長寿の証として表現したものです。彼らはそうした表現に興味が湧いたと同時に、その微細な彫刻に見惚れたようです」と江口人形店の江口誠二さん。
 伝統的な弓野人形としてつくられるものは人物や仏像が多く、これまで動物の像がつくられることはあまりありませんでした。ところが、江口人形店の創業者が江口亀次郎という名前であったため、亀だけは特別に親しみのあるモチーフだったと言います。

 

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江口人形店の4代目、江口誠二さん

 

亀を抽象化することに苦心

 本来、弓野人形は原型をつくり、原型を覆って型取りし、型に粘土を押し入れて成型し、乾燥させて素焼きし、最後に彩色します。しかし、今回は製作時間が限られていたことと比較的大きな作品だったことから、製作途中での割れのリスクを回避するため、粘土を固めて仕上げる彫刻作品としました。そのための粘土選定と、亀の表現に労を費やしたと江口さんは振り返ります。
 「デザイナーからは、亀の神聖さを表現してほしいと言われました。最初につくった亀を見せると『リアル過ぎる』と言われ、もっと抽象化するようにアドバイスされました。彼らがイメージしたのは、浮世絵に描かれたような亀だったようです」と江口さん。
 「今までにやったことがないことに挑戦したい」と意気込んでいた江口さんは、このように自分の考えとデザイナーの考えが違う場合には、自分の考えを押し通すのではなく、デザイナーの意向に正面から向き合うように心がけたと言います。おかげで「弓野人形の系譜を基にしながらも、何段階も先に進めたような気がする」と確かな手応えを得ることができました。

 

全長45センチメートルの亀の像を粘土で製作

全長45センチメートルの亀の像を粘土で製作

 

抽象化した卵型オブジェも

 亀の全身オブジェのほか、併せて小さな卵形のオブジェも素焼きで製作しました。これは亀の甲羅と脚に加え、尾についた藻の3つの要素を取り出し、抽象化したオブジェです。素焼きした後、絵具で甲羅を群青色に、脚を金色に、藻を白色に鮮やかに塗ることで、目を引く作品群に仕上げました。
 「亀の一部分を抽象化するというデザイナーの発想には驚きました。また、日本ではたいてい蓋と器に分けて小物入れなどの実用品にしますが、これはペーパーウェイトという用途はあるものの、あくまでもオブジェ。このあたりの考え方も新鮮でした」と江口さん。「レベラション来場者には、彫刻の技術を見てもらえれば」と期待を込め、作品を送り出しました。

 

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工房を訪問したデザイナーらは様々な型に見入った

 

ピースクラフツSAGAは、パリで開催された国際工芸フェア「レベラション2017」に出展しました。世界のファインクラフトが一堂に集うレベラションは、佐賀の伝統工芸が新しい一歩を踏み出すのに相応しい場となりました。特集記事ではレベラションに向けて最先端工芸に取り組むつくり手たちをご紹介します。第4回は江口人形店です。

 

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

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