ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
2017年6月5日

和紙を天然藍で染めることに初挑戦

レベレーションに出品した「紙藍染」
レベレーションに出品した「紙藍染」

和紙の素を藍に染める

 ドーム形天井から何枚もの和紙が吊るされ、そこに優しい自然光が差し込む……。パリの国際工芸フェア「レベレーション」で、ピースクラフツSAGAの展示ブースでは海底から海面を見上げた時の景色をイメージした、インスタレーション「海雲」を発表しました。その景色を形成する和紙「紙藍染(かみあいぜん)」を製作したのが、佐賀県下で名尾手漉和紙を守り続ける肥前名尾和紙の谷口祐次郎さんです。

 「紙藍染」は、まさに藍に染めた和紙。ピースウィンズ・ジャパンの仲介により、京都で着物染色を専門に行っている浅井ローケツが協力し、和紙の素を藍に染めました。そもそも藍は植物を原料にした天然染料で、布を染色するために用いられます。一方、和紙の染色に用いられるのは化学染料。つまり原料も工程もまったく違う中で、今回は実験的に和紙の素を藍に染めてみたのです。

 

肥前名尾和紙の6代目、谷口祐次郎さん

肥前名尾和紙の6代目、谷口祐次郎さん

 

失敗を生かして模様に

 藍に染めた和紙の素を用いて、谷口さんが初めて漉いた際、原料同士が化学反応を起こし、和紙の素が繊維状に固まって和紙上にデコボコと散在する現象が生じました。「予想もしないできあがりに驚いた」と谷口さんは振り返ります。滑らかな和紙として漉くことはできなかったのですが、作品づくりのために肥前名尾和紙の工房を訪れたフランス人デザイナーの2人は、この点に着目。従来の和紙をベースにしつつ、藍に染めた和紙の素をグラデーション状に表現することを提案しました。

 「従来の技法を応用しながら、デザイナーが考案したグラデーション模様をどうつくるかということに工夫を重ねました」と谷口さん。そこで新たに編み出したのが、まず和紙を薄く漉いて、藍に染めた和紙の素を全体にまばらに散らし、さらに和紙を漉いてから、藍に染めた和紙の素を部分的に散らしてグラデーションを表現するという手法でした。全長2メートルにも及ぶ大判和紙であるため、作業は重労働に。また、和紙を漉いた後は天日干しをするため、天候を見ながらの作業となりました。

 

天日干しした和紙を剥がして仕上がりを確認

天日干しした和紙を剥がして仕上がりを確認

 

意図的にシワを入れて表情豊かに

 谷口さんがさらに開発したのは、和紙の表面にポコポコとした盛り上がりを施した「紙泡(しほう)手の和紙」と「紙泡 月の和紙」です。これは和紙がまだ濡れている状態で手や物を載せると、それらに張りついて部分的に盛り上がる現象を利用した手法です。また、既存商品を基にした「まゆ玉ランプ」も出品しました。これは和紙を張り子のように固めたランプで、今回の出品作品では和紙に意図的にシワを入れ、表情豊かなランプとした点が特徴です。

 「伝統的な和紙を現代の暮らしに合った設えや道具として提案したいという考えがありながらも、固定概念にずっととらわれてきたので、デザイナーからの様々な提案はとても新鮮でした。レベレーションが海外進出のきっかけになればいいですね」と谷口さんは思いを語りました。

 

デザイナーらは工房を視察し、和紙漉きの工程を学んだ

デザイナーらは工房を視察し、和紙漉きの工程を学んだ

 

ピースクラフツSAGAは、パリで開催された国際工芸フェア「レベラション2017」に出展しました。世界のファインクラフトが一堂に集うレベラションは、佐賀の伝統工芸が新しい一歩を踏み出すのに相応しい場となりました。特集記事ではレベラションに向けて最先端工芸に取り組むつくり手たちをご紹介します。第6回は肥前名尾和紙です。

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

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