ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
2017年7月26日

銀器に日本の四季を彫り込み 幻想と神秘の世界を表現 花鏨

ハマグリ型の銀製合子の内と外に日本の四季を彫り込んだ作品に関心が集まった
(写真:Julie Rousse)
ハマグリ型の銀製合子の内と外に日本の四季を彫り込んだ作品に関心が集まった (写真:Julie Rousse)

この世に1つの宝物のように展示

 金工作家の有馬武男さんが営む工房「花鏨」は、貝をモチーフにした合子(ごうす、小型の合わせ型銀器)「蛤合子」シリーズを、レベラション2017の会期中、「ピースクラフツSAGA」のブースに展示しました。蛤合子は、ブース内のほかの作品とは異なり、ドーム型のガラスケース内に展示され、来場者が硝子越しに覗き込むように演出されました。銀や金を素材に使ったデリケートな金工作品に配慮するとともに、この世に2つとない貴重な作品というイメージを表現するためです。もちろん、関心のある来場者には、ガラスドームを開けて作品を取り出し、手に触れてディテールまで鑑賞してもらいました。手のひらに蛤合子を載せた来場者の緊張した表情が、少しずつほころんでいく様子が今も脳裏に残っています。

 

ドーム型のガラスケースに入れて展示された蛤合子。展示の方法次第で、大切なものというイメージ伝わる

 

語れぬはずの貝が日本の四季を物語る

 花鏨が作成した蛤合子は、副島硝子工業の「玉手箱」同様、四季シリーズ4点として日本の自然を表現した作品です。春夏秋冬は、「蛤合子 春 渓花」「蛤合子 夏 陽花」「蛤合子 秋 錦花」「蛤合子 冬 雪花」の4作品に描かれました。玉手箱が四季を色彩や抽象的なイメージで表現したのに対し、蛤合子は金銀の動植物を彫り込むなどして、四季を物語る具体的なモチーフを持ち込みました。一方、空や風といったモチーフは、仏人コーディネーターやデザイナーのアドバイスを取り入れ、点描などを用いて抽象的に描出しています。したがって作品には、風雅な日本画の技法と印象派のような西洋絵画の技法が同居しているかのようです。語れぬはずの小さな貝殻に施された日本の四季は、神秘的で幻想的な世界観を伝え、上質のファインクラフトとして評価されました。

蛤合子 春 渓花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

蛤合子 春 渓花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

 

蛤合子 夏 陽花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

蛤合子 夏 陽花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

 

蛤合子 秋 錦花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

蛤合子 秋 錦花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

 

蛤合子 冬 雪花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

蛤合子 冬 雪花(縦6㎝×横7㎝×高さ3.5㎝)

 

技巧と物語の同居が共感呼ぶ

 「デリケートで、細やかな技を見て取れます。これ自体がジュエリーのように大切なものだと感じるのはそのためでしょう」「一瞬自然物である貝殻に瑕(きず)が入っているのかと思いましたたが、これは人工的な創作で、そこに物語があることに気づきました。海の底に眠る貝殻に、地上の風景が彫刻されているなんて、素晴らしいファンタジーを感じます」など、技巧だけでなく、作品やその背景を深く読み込む来場者の声を多く聞けました。


佐賀の地でファインクラフト目指す

 ジュエリーデザイナーを経て、金工作家となった有馬さんは、佐賀の実家を創作の地に選びました。そこには金工の産地としての歴史や産業の集積はありません。独り、黙々と作品と向き合う姿が印象的です。いまこの時、この地から、新たな佐賀の工芸が生まれ、未来につながるファインクラフトとして羽ばたいていくに違いありません。


(下川一哉/デザインプロデューサー、エディター、意と匠研究所代表)

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