ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
2017年8月14日

土着性と洗練性を併せ持つ クス材の家具を出品 レグナテック

欧州では、クス(楠)を素材に用いた家具は珍しく、クス材の香りにもエキゾチックさを感じる来場者が多かった
(写真:Julie Rousse)
欧州では、クス(楠)を素材に用いた家具は珍しく、クス材の香りにもエキゾチックさを感じる来場者が多かった (写真:Julie Rousse)

「海」と「時間」を表す展示什器としても

  諸富家具・建具を代表する家具メーカーのレグナテックは、クス(楠)材を全面に使った家具シリーズを、レベラション2017の会期中、「ピースクラフツSAGA」のブースに展示しました。特に、クスの一枚板を使用した「記憶」(トメ脚リビングテーブル)は、来場者の目に留まりやすいブース前面に展示され、江口人形店の亀のオブジェ「萬年亀」と「乙姫」を展示するための什器としての役割も果たしました。クス材が持つ自然な木目を生かしたテーブル、記憶の天面に展示された亀のオブジェは、水の流れの中をゆっくりと泳いでいるかのようです。その存在は、ブース全体のテーマである「海」と「時間」を象徴する作品として極めて印象的で、「記憶」は展示什器として脇役に回ることなく、来場者に強くアピールしました。

 

木材の使い方で風土と文化を表す

 レグナテックが出品したのは、「記憶」(トメ脚リビングテーブル)、「楠」(コンソールテーブル)、「根っこ」(脚高椅子)の3アイテムです。いずれも、クス材の特徴である、ダークな色調と階調豊かな木目を生かしたデザインが特徴で、これらはレグナテックの技術と仏人コーディネーター、デザイナーの感性が融合した作品と言えます。特に、「記憶」の曲げ部分には切れ目や継ぎ目が一切見られず、天面を流れる木目が脚部から滝のように一気に落下する自然景観が作品中に見えてきます。

 クスは、佐賀県の県木であり、佐賀の自然や町並みを形成する固有の植物です。肥前国風土記にも紹介されるクスの巨木は、佐賀という地域の成り立ちとも強く関わる土着的なアイコンでもあります。一方、欧州にクスの自生は少なく、親しみのある木材とは言えません。しかし、木材が発するクス独特の芳香や木目の豊かな濃淡は、アジアを連想せるエキゾチックな素材として注目されました。

 

クスの一枚板を使用した「記憶」(トメ脚リビングテーブル)

クスの一枚板を使用した「記憶」(トメ脚リビングテーブル)。幅160㎝、奥行き50㎝、高さ40㎝

 

クスの一枚板を切断し、引き出しの前板としたチェスト「楠」(コンソールテーブル)

クスの一枚板を切断し、引き出しの前板としたチェスト「楠」(コンソールテーブル)。幅117㎝、奥行き34.6㎝、高さ84.5㎝

 

クス材の脚高椅子「根っこ」

クス材の脚高椅子「根っこ」。幅38.4㎝、奥行き40.4㎝、高さ69.8㎝

 

クスの香りにも好印象

 レグナテックが出品した家具の展示に対して、「クスの香りを嗅ぐと、少し落ち着いた気持ちになれそうです」「木目を水の流れに見立てるところに、石庭や盆栽のような日本文化を感じます」といった感想が、来場者から得られました。また、木材は、比較的身近な素材であるため、多くの国々から木製家具や木工作品がレベラションに出品されました。ロシアからの出品作品では、テーブルや椅子といった家具でありながら、量感のある塊としての作品が目を引きました。また、南米チリからの出品では、テーブルに置く花器のような器ですが、荒波に長い年月さらされた流木に似た表情が印象的でした。いずれも、国や地域の自然や風土、長い歴史を思わせる表現です。

 

ロシアから出品された木製テーブル。

ロシアから出品された木製テーブル。木材を大地や岩のような塊としてとらえる表現手法は、レグナテックの作品とは対照的(写真:下川一哉)

 

チリから出品された木製の容器。

チリから出品された木製の容器。流木のような表情を引き出す手法に、注目が集まった。

 

土着性と洗練性は変わらぬ本質

 優れたデザインや工芸、建築には、土着性と洗練性が同居しています。土地固有の素材や歴史・文化を生かし切る技術と、現代の暮らしの中で映えるための創造性が結びついてこそ、優れたものづくりと言えます。それは、ファインクラフトを目指すうえでも変わらないものづくりの本質と言えそうです。レグナテックは、このことをレベラションで証明したと言えます。

(下川一哉/デザインプロデューサー、エディター、意と匠研究所代表)

 

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