ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
活動レポート
2018年5月16日

開けると金糸が輝く粋なカードケース[佐賀錦振興協議会]

佐賀市歴史民俗館の旧福田家で、佐賀錦の織地サンプルを前に打ち合わせをする佐賀錦振興協議会の幹部3人と澄川さん(写真:すべて下川一哉)

 

名刺入れをカードケースにリデザイン

 

 ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、佐賀の伝統工芸支援事業「ピースクラフツSAGA」の活動の一環として、2018年2月より商品開発を新たに開始しました。今回は、佐賀錦振興協議会の商品開発について経過を報告します。2月1日、商品デザインに携わることになったプロダクトデザイナーの澄川伸一さんが、佐賀錦振興協議会の活動拠点である佐賀市歴史民俗館の旧福田家を初めて訪れました。まずは幹部の人たちとの顔合わせのほか、澄川さんが佐賀錦の特徴を理解し、その魅力や価値を確かめることが目的です。

 旧福田家の1階には、会員が織って、製作した佐賀錦の小物や雛人形が多数展示されています。それらをじっくりと見た後、澄川さんが着目したのは名刺入れでした。なぜなら他のクラッチバッグや懐紙挾み、巾着袋などと比べると、名刺入れは日常使いが最もできるアイテムだったからです。「男女問わず、名刺入れは多くの人々が持つもの。また名刺を持ち歩かない人でも、クレジットカードや会員カードなどを入れるカードケースなら利用ができます。そう考えるとカードケースは、今後、財布以上に使用頻度の高いアイテムになるのではないでしょうか」と澄川さんは提案します。

 

外と内を逆に⁉︎ 発想の転換が功を奏す

 

 現在、佐賀錦振興協議会が製作している名刺入れは、外面が佐賀錦、内面が別の布という構成ですが、これには弱点がありました。長く使用するうちに外面の佐賀錦が擦れてほつれてくること、また水に弱いことです。これらの弱点を解決するため、澄川さんが考案したのは「外面と内面を逆にする」デザイン。つまり内面に佐賀錦を張り込んで大切に保護しつつ、外面には革を採用するという案でした。革であれば擦れや水に強く、また高級感も演出することができます。まずは試作品を製作するため、数ある佐賀錦の織地サンプルの中から「菱に花菱」という、紺地の菱の中にピンクの菊花文が部分的に入った文様を1枚選び出しました。

 東京に戻ると、澄川さんはスケッチと図面、イメージを伝えるためのCGと革製カードケースの見本を用意しました。ヘリの処理方法は2種類考えられましたが、あくまで佐賀錦を守るため、内面へ革をヘリ返し(パイピング)する方法を採用しました。ヘリ返しの角には、革を放射状に寄せていく「菊寄せ」を施します。片方のポケットには名刺を40〜50枚、もう片方のポケットには3枚程度もしくはプラスチック製カード1枚収納することを想定し、マチの広さを設定しました。2月中旬には、商品開発のディレクターを務める意と匠研究所が懇意にしている、沖縄の革小物ブランド「楽尚」にカードケースの試作を依頼しました。試作では、佐賀錦にボンドを使用しても影響はないか、佐賀錦をカットした際にどのようにほつれるのかなどに注意を払いながら進められました。そして3月に入った頃、試作品が完成したとの連絡を受けました。

 

試作を重ねて、さらに完成度を高める

 

 3月14日、澄川さんが佐賀錦振興協議会を再び訪れ、幹部の人たちとともに試作品を確認しました。「シンプルでいい」「おしゃれ」「開けた時に目を惹くんだけど、閉じた時には普通の革の名刺入れになるのでイヤらしくない」など、皆の反応は上々です。使用する佐賀錦の面積もそれほど広くないので、佐賀錦振興協議会にとっては負担軽減につながることも評価されました。主な改良点としては、カードや名刺を出し入れするたびに佐賀錦が擦れてほつれてくるので、ポケットのヘリもヘリ返しすることなどが挙がりました。革は黒を手始めに、その後の展開次第では紺、赤、白、ナチュラルブラウンなどからもう1色追加することを検討。開けた時のインパクトを強めるため、佐賀錦はもう少し明るめの色で金の光沢感が強いものにすることにし、澄川さんが再び、数ある織地サンプルの中から慎重に選び出しました。選ばれたのは「重ね菱」という菱が何重にも重なった文様で、一見すると、金と紺の市松文様にも見える点が特徴です。

 早速、澄川さんが修正した図面を携え、今度は、同じく意と匠研究所が懇意にしている東京で革小物の試作・OEMメーカーを営む「石川」に試作を依頼しました。石川と相談した結果、外面には「キップ」という生後6カ月〜2歳の子牛の革を採用することにしました。キップはやや光沢とシボがあり、手触りが柔らかなのが特徴です。1週間後、石川から試作品が上がってきました。4月2日、澄川さんに第2弾の試作品を確認してもらうと、その完成度の高さに大満足。あとは佐賀錦振興協議会の確認を待つのみとなりました。さて、発表は2018年8月頃。ふるさと納税の返礼品にもラインアップする予定ですので、どうぞお楽しみに。(杉江あこ/意と匠研究所)

 

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澄川さんが最終的に選んだ佐賀錦「重ね菱」。金と紺の市松文様にも見え、華やかで粋な印象を与える

ご訃報
青磁作家として日本の陶芸界をけん引してきた、佐賀県武雄市在住の人間国宝(重要無形文化財保持者)、中島宏さんが3月7日にご逝去されました。私どもは、ピースウィンズ・ジャパンを指定した佐賀県へのふるさと納税の返礼品に中島さんの作品を取り扱わせていただいておりました。心からご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さまにはお悔やみを申し上げます。

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

ふるさと納税で伝統工芸を支援