「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
つくり手

名尾手漉和紙三百年の歴史と技を唯一継承する谷口祐次郎さん

名尾手漉和紙は300年間山里に伝えられた手漉き和紙で、ピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税の返礼品にもなっています。かつては提灯や障子紙として使われてきたという丈夫なぬくもりあふれる名尾手漉和紙を製作する谷口祐次郎さんにお話を伺いました。

最後の1軒として県重要無形文化財の技を守る

佐賀市の中心部から車で約40分、脊振山系の山あいに位置する大和町の名尾集落に紙漉きの技法が伝わったのは、今から300年以上前の元禄12(1699)年のこと。農家の副業として地域暮らしに根付いていた「名尾手漉和紙」は、佐賀県の重要無形文化財に指定されています。その名尾手漉和紙の技を今も一軒だけ継承しているのは、明治9(1877)年創業の6代目の谷口祐次郎さんの名尾手すき和紙株式会社です。名尾集落周辺にのみ残っているという梶(カジ)を用いてつくられる名尾手漉和紙は、和紙を漉く過程で長い梶の繊維同士が緻密に絡みつくことから、薄く漉いても破れにくくなることが特長です。

バブルの絶頂期に紙漉きの家業を継いで

谷口さんが家業の名尾手漉和紙を受け継いだのは、今から25年ほど前のこと。「昔は紙漉きをする家が100軒ほどあったといいますが、いつの間にか生産しているのはうちだけ、という状態にまで減ってしまいました。そしてわが家も紙漉きをやっていた父が高齢に。紙漉きなんて仕事はなくなるものだと思っていましたし、時はバブルの絶頂期。自分も父の後を継ぐつもりはなかったのですが、周囲の薦めで<紙漉きがダメだったらまた元のサラリーマンに戻ればいいや>程度の軽い気持ちで後を継ぎました」。

日常生活で広く使ってもらうための工夫と加工

「家業といっても梶の栽培から紙漉き、出荷まで全部自分ひとり。部品を仕入れて組み立てる、みたいな分業の仕事ではないのでゼロから自分でやる、そこが面白い。親の仕事を見て、教えてもらったこともありますが、やっぱり自分で試行錯誤しながらやってみないとわかりませんね」。現在の名尾手漉和紙に見られる色染めや押し花などは、祐次郎さんの代になってから始めた工夫のひとつ。「名尾手漉和紙は、提灯や障子など人の印象に残らない部分に使われてきました。紙を漉き問屋に納めるだけでは生活も苦しいということもあり、原料から製品づくりまですべて自分が手掛けた品を一般の人に日常で使ってもらいたいと考えて、商品の加工と販売も始めました」。

お客さんのアイデアを商品づくりにいかして

ふるさと納税返礼品(名尾手すき和紙/レターセット) 名尾手すき和紙/レターセット
ふるさと納税返礼品(名尾手すき和紙/扇子) 名尾手すき和紙/扇子

「直接お客さんに和紙を買ってもらった時は<何に使うんですか>と必ず聞きます。すると自分たちでは思いつかないような使われ方、例えばコースターとか、照明をつくるとか。これが逆に勉強になりました」。パッケージやラベルに用いられるなど和紙の用途も広がりつつある現在、ピースクラフツSAGAのふるさと納税でお届けする名尾手漉和紙のアイテムは、「レターセット」や「扇子」、名尾手漉和紙を張り固めた「まゆ玉ランプ」などで、いずれも工業製品にはない手づくりのあたたかさを感じていただきたい品々となっています。

工業製品にはない「手づくりの文化」を感じてほしい

ふるさと納税返礼品(名尾手すき和紙/まゆ玉ランプ) 名尾手すき和紙/まゆ玉ランプ

そしてただ1軒だけ残る名尾手漉和紙、となると気になるのは後継者です。「うちの長男が4年ほど前から一緒に仕事をしているんですよ。7代目となる長男のことを考えると、20代・30代の若い方にも日常の普通の紙として手漉き和紙を使ってもらいたい。今の若い方が手漉き和紙どう捉えているか分からない部分もありますが、工業製品に囲まれて暮らしていますから<手づくりの文化>を、名尾手漉和紙を通じて見てもらいたい、と思っています」。

公開日:2017年2月22日
 
更新日:2021年2月17日

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