「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
活動レポート
2017年5月29日

楠の一枚板が持つ風合いを生かした家具づくり[レグナテック]

レベラションに出品した家具「記憶」

 

 

一枚板の楠だからこそ

 佐賀県の県木と言えば、楠(くす)。レグナテックは楠の一枚板を使った家具3点をパリの国際工芸フェア「レベラション」に出品しました。レグナテックは、九州有数の家具産地である諸富家具を代表するメーカーの1社で、ピースウィンズ・ジャパンの働きかけを受け、フランス人デザイナー2人と家具の共同開発に挑みました。
 レグナテックの工場を訪問したデザイナー2人は、波打った楠の木目やコブ、樹皮を剥いだ時に現れる「耳」などの天然の表情に大変興味を示したそうです。「こうした一枚板ならではの特徴がデザイナーには新鮮に映ったようで、これらを生かした家具をつくりたいと要望されました。そのため、難易度が上がりましたね。そもそも一枚板を使った家具が欧州では珍しいようです」とレグナテック販売部の西久保盛一さん。
 一枚板を使った家具は、それに相応しい木材を入手できて初めて製作できる商品。そのためレグナテックでは、通常、楠の一枚板は一点ものの創作家具にしか使用していません。量産品の家具には適さないためです。ところが、今回は量産品の家具デザインを基にしながら、楠の一枚板を使用することに挑みました。「デザイナーとのやりとりには苦心しました。家具としての安全性や使い勝手などを考慮すると、デザイナーから提案されたCG図面通りに実現できない部分もあり、様々な箇所で調整する必要がありました」と西久保さんは振り返ります。

 

波打った木目やコブがある楠の木

波打った木目やコブがある楠の木

 

シンプルを突き詰めた家具に

 量産品の「トメ脚リビングテーブル」を応用した「記憶」は、全長2.4メートルの楠の一枚板を使い、両脇を直角に折り曲げて脚にした、天板幅1.6メートルのシンプルなリビングテーブルです。「直角に折り曲げた」ように見える脚のつけ根は、天板と脚の接合面をそれぞれ45度に切削し、つなぎ棒とボンドで留め加工を行いました。天板の側面には「耳」を残し、一枚板の魅力を味わえる作品に仕上げています。
 また、量産品の「スピッココンソールテーブル」を応用した「楠」は、楠の一枚板を使った幅1.17メートルの引出しを特徴とするチェストです。2段ある引出しの前板には取手をいっさい取り付けておらず、前板の上部もしくは下部の隙間に手を差し込んで引き出す仕組みです。手を差し込めるように、天板と前板の側面はそれぞれ斜め45度に切り落とされており、それが全体にシャープな印象を与えます。

 

工場では機械を使って木材を切削する

工場では機械を使って木材を切削する

 

楠は触って気持ちが良い

 「部屋に置いて、手で触って、香りを嗅いで気持ち良い。楠をはじめ木製家具の魅力はそこにあります。現在、レグナテックはアジアを中心に海外展開を進めていますが、欧州で発表したのは今回が初めて。日本の家具に対して、欧州でどのような反応があるのかを詳しく知りたいですね。さらに欧州展開を担ってくれる良いビジネスパートナーが見つかればといいなと思います」と西久保さんは意気込みました。

 

フランス人デザイナーらがショールームを訪問した
フランス人デザイナーらがショールームを訪問した

 

ピースクラフツSAGAは、パリで開催された国際工芸フェア「レベラション2017」に出展しました。世界のファインクラフトが一堂に集うレベラションは、佐賀の伝統工芸が新しい一歩を踏み出すのに相応しい場となりました。特集記事ではレベラションに向けて最先端工芸に取り組むつくり手たちをご紹介します。第5回はレグナテックです。

 

(杉江あこ/意と匠研究所)