「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
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作礼窯が生む唐津焼は岡本作礼さんの研ぎ澄まされた時代感覚の賜物

作礼窯は作礼山の麓にある窯元で、唐津焼の陶芸家、岡本作礼さんが営んでいます。ピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品の中でもどこかモダンな雰囲気を漂わせた作品として人気を集めています。岡本さんにものづくりに対する姿勢を伺いました。

自然の恵みが豊かな作礼山の麓にある作礼窯

1989年に佐賀県唐津市にある作礼山の麓に作礼窯を築いて以来、同地でずっと作陶に励んでいる唐津焼の陶芸家、岡本作礼さん。「昔から作礼山が好きでした。雑木林が多くて、湧水池が3つもあって、水が軟水でおいしい」と魅力を語ります。春と秋には自然からインスピレーションを受けることが多く、「自然を通して、400年前の陶工と想いや時間を共有できるのが良い。山の麓に住んでいるメリットですね」と話します。「唐津焼は、土、釉薬、形、焼成の4つの掛け算で成り立っています。時間配分で言えば、土や釉薬の素材づくりが8割を占める。近所の農家から藁を購入するなど、私は唐津市近辺で素材を探して調達しています」と説明します。

11年もの修行を積んだ後に作礼窯を築く

唐津市に生まれ育った岡本さんは、小中高校時代はずっと美術部に所属し、油絵を描いていました。「将来は芸術に関わる仕事がしたい」という思いを漠然と抱いていたところ、岡本さんの人生の師匠と言うべき地元の寺の住職から「唐津に生まれたなら、唐津焼に関わる仕事をした方がいい」と勧められ、唐津焼の道に入りました。修行先は十二代中里太郎右衛門の三男である中里重利さんの窯元でした。「厳しい先生でしたが、窯場の環境になんとも言えない安心感があって好きでした」と振り返ります。11年もの修行を積んだ後に独立。現在、作礼窯では2カ月に1回の頻度で登り窯を焚き、岡本さんは精力的に作品づくりを行っています。

ふるさと納税の返礼品でも注目された黒高麗の皿

唐津焼の中でも、作礼窯の作品はどこかモダンな雰囲気を漂わせています。例えばふるさと納税の返礼品にも選ばれた「黒高麗の縁飾り皿」は、黒高麗特有のマットな質感と飴色がかった黒色、そして5枚の花弁を思わせるダイナミックな輪花形が見事に調和し、凛とした美しさを携えています。瑞々しい果物をはじめ、洋菓子やアイスクリームを盛ってもなぜか様になるのです。「伝統は、元々、生まれた時には最先端でした。だから、今、昔の作品の写しをしても伝統にはならないというのが、自分の根っこにあります。アンテナを常に張り、新しいものを求めるようにしています」と岡本さんは話します。

岡本作礼さんが心掛けるのは品格のある焼物

岡本さんの習慣は、美術館巡り。「東京をはじめ、どこの都市に出かけても、美術館へは必ず行きます。焼物はもちろん、彫刻、絵画、仏具なども観るのが好きですね。気になった展示品があると、唐津焼に置き換えるとどうなるかという風に考えます」。独自のアンテナと想像力が作品づくりに生きているようです。 「焼物には焼物の美しい線や形があります。私は焼物のボディがピリッとしていないと嫌なんです。最低限の品格だと思うから。焼物の佇まいには自ずと作家自身の生き方や考え方が現れます。長い年月を経て残るのは品格のある焼物ではないかと思います」と岡本さんは力強く語ります。

唐津焼の中でも最も好きな様式は朝鮮唐津

唐津焼には様々な様式があるのが特徴ですが、中でも岡本さんが最も好きな様式は何かと尋ねると、「朝鮮唐津」という答えが返ってきました。「朝鮮唐津は1320度の高温で焼くので、丈夫で汚れにくい。だから普段使いに良い。唐津焼というと壊れやすいとか汚れやすいというイメージを持つ人もいるけれど、違うと思うんですよ」と岡本さんは言います。 今後の展望を尋ねると、「私は60歳を越えましたが、今後もアンテナを常に張って新しいものづくりに取り組みたいと思っています。30歳代の精神力で一生つくり続けますので、まだ新人のつもり」と頼もしく話してくれました。

(文:杉江あこ/意と匠研究所、取材写真:藤本幸一郎、商品写真:ハレノヒ)

公開日:2017年12月30日
 
更新日:2020年6月7日

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