ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
つくり手

有田焼/やま平窯

(取材写真:藤本幸一郎)

常にチャレンジ精神を持ち、有田焼の新しい技法を生み出す

究極に薄くて軽いエッグシェル

 これが本当に磁器なのかと疑ってしまうほどの薄さ。やま平窯の看板商品「エッグシェル」シリーズを初めて見ると、その薄さに誰もが衝撃を受けます。「かつて自社のオリジナル商品を模索しているとき、ある料理人から聞いた話がヒントになりました。それは飲み物を飲む器が厚いと、口に付けたときの触感が飲み物の味に大きく影響を与えてしまう。飲み物の味をできるだけ損なわずに味わうには、器は薄い方が良い。また器が重いと、人の神経が重量に向いてしまい、味覚にあまり向かなくなる。そこで極力薄くて軽い、口当たりの良いカップを開発しようと考えたことがきっかけです」とやま平窯の代表、山本博文さんは話します。

 かつて有田焼にも「卵殻手(らんかくで)」と呼ばれた伝統技法がありました。これは中国から伝わり、江戸時代後期に流行った技法で、卵の殻のように薄いことからこう呼ばれました。山本さんは卵殻手を参考にしながら、熟練の職人の手仕事により、厚みわずか1ミリメートルの生地を成形することに成功。どこを取っても均質な厚みを保つうえ、1300℃でしっかりと焼き上げられているので、1ミリメートルの薄さなのに意外にも丈夫なのです。またガラス質の成分を多く配合した透過性の高い陶土を使用しているため、注いだ飲み物がほのかに透けて見えるのも特徴です。磁器なのに透けるという、不思議な感覚を味わうことができます。

熟練の職人が手仕事を行っている、やま平窯の工房

素焼きした生地の表面をサンドペーパーで磨いて整える

モダンな家庭用食器ブランドを創設

 山本さんは、やま平窯の2代目。以前から都内の商業施設や外資系ホテル向けに、レストランや客室アメニティー用食器などを多く生産し、焼物の最新トレンドを下支えしてきました。このノウハウを生かして、数年前に家庭用食器ブランド「Y’s home style」を創設。Yには窯の頭文字と、家で「ゆるりと食事してほしい」というメッセージが込められています。Y’s home styleのコンセプトは「和、シンプル、モダン」。和には、外国人の目から見た和テーストを盛り込んでいます。「こうしたコンセプトは有田焼が最も弱かったところなので攻めてみました」と山本さんはその戦略を明かします。

 例えば17世紀オランダのデルフト市で東洋磁器に憧れてつくられた磁器を再現し、乳白色のマットな釉薬を載せた「オランダ」シリーズ。黒いマットな釉薬を載せた「イタリア」シリーズ。古くから欧州で使用されてきたピューター食器をモチーフに、銀の上絵具を塗って焼き付け、まさに錫のような質感を表現した「イタリアピューター」シリーズなど。いずれも欧州の歴史や文化にヒントを得たクラフト感のある食器で、やま平窯の定番商品です。また最近開発された、生地に大量のシャボン玉を載せて模様をつくり出す「白泡」シリーズもユニークです。これは泡が自然に消えて残していった跡をそのまま生かした模様で、同じ姿は1つもなく、自然の泡の景色を楽しめます。底面に透明釉で渦巻き模様を描いてアクセントに 素焼きした生地を皿板に載せて、職人が運ぶ

突破口は新しい分野への挑戦

 「焼物の使い手は女性が多いので、妻にも意見をよく聞きます。ものづくりに集中していると、肝心な使い手の暮らしが見えなくなることが多いので」と山本さん。こうして家庭用食器ブランドにもトレンドを上手く取り入れることに成功したやま平窯ですが、かつては苦しい時期もありました。そのときに突破口となったのは、新しい分野へのチャレンジ精神です。「有田焼にはいろいろな伝統技法があり、それらにある程度基づきながらも、別の技法を試したいと考えています。これまでの経験を糧にし、常に新しいことに挑戦したい」と山本さんは語ります。伝統を守るだけでなく、挑戦する有田焼の姿を、やま平窯は見せてくれています。

(杉江あこ/意と匠研究所)

工房の奥にある2台のガス窯 窯から出たばかりの素焼き生地が整然と並ぶ

やま平窯元
所在地:佐賀県西松浦郡有田町桑古場乙2267-1
TEL:0955-42-2459
営業時間:平日8:00〜17:00、土日祝10:00〜17:00
定休日:不定休
URL:http://www.yamaheigama.co.jp/

製品紹介

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

ふるさと納税で伝統工芸を支援