ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
つくり手

有田焼/百田暁生

(取材写真:藤本幸一郎)

淡い釉薬を絵具のようにかけ回し、投げ塗りしたモダンな有田焼

凛としながらも温かみを感じる白磁

 佐賀県・有田町の黒牟田地区の山間を歩くと、漆喰塗りのコンクリート壁が印象的な1階建てのモダンな建物が見えてきます。ここは百田暁生さんのショールーム「in blue 暁」。重厚な扉を押して中に入ると、自然光が差し込む窓際の陳列棚に、匠の腕を見せつける作品がポツンポツンと並んでいるのが目に飛び込んできます。

 百田さんの匠の冴えは、まず器の形に表れています。確かなロクロの技で成形した白磁は非常に整ったプロポーションで、生地は薄く、モダンな印象を見る者に与えます。そこに載せられた淡い水色の釉薬は磁肌にまとわりつくようにかけ回され、群青や紅の釉薬が器から器へと飛び跳ねて遊んでいるように見えます。凛としながら、なんとも言えない温かみを感じさせる白磁なのです。作風に合うよう、陶土は最高ランクの特上とその次のランクの選上(えりじょう)の中間ランクを使用していると言います。

広い敷地に建つショールーム「in blue 暁」

ショールームの窓際の陳列棚に作品が品良く並ぶ

2人の先生から学んだロクロの技術

 百田さんは有田町で商社を営む家に生まれ、子供の頃からたくさんの焼物に囲まれて育ちました。東京の飲食店に一度就職したものの、数年後に有田町へ戻り、焼物の仕事に携わる決意を新たにしたと言います。父の勧めで日展作家の副島四郎さんに師事した後、現代のロクロの名工と名高い奥川俊右衛門さんにも師事し、ロクロの技術を身につけました。そして1995年に窯とショールームを開きました。

 「副島先生からは大胆なロクロの回し方を、奥川先生からは緻密で繊細なロクロの回し方を学びました。2人の先生に就いたことで、焼物は形が大事と強く意識するようになりました。これからもずっと形を追い求める日々です」と百田さんは話します。そうしてたどり着いたのが、形と釉薬とを融合させた作品づくりです。形を極める一方で、百田さんは釉薬も勉強し続けてきました。その結果、本来、素焼きした生地の表面全体にかける釉薬をまるで絵具のように扱い、釉薬によって模様をつけるという表現方法を編み出しました。淡い青磁釉をはじめ、瑠璃釉や辰砂釉などを使い、重ね塗りや投げ塗り、ぼかし、削り取りやマスキングなどを駆使して、抽象的な模様を描きます。

いつも1人で作品づくりに勤しむ百田さん
水場で釉薬を精製する

新しい形を追求していきたい

 「投げ塗りは、空中で絵を描くようなイメージです。自分の想像どおりに釉薬が流れるように導いたり、削り取ったりします。このように釉薬の発色と流れ方をコントロールしてつくり上げているので、偶然性に任せているように見えて、実は偶然の美は1つもありません」。凛とした形の白磁でありながら、温かさや柔らかさを感じさせるのは、このとろりと載った釉薬が与える効果でしょう。しかし、百田さんはこうも言います。「あくまでも形ありきなので、色が主役にならないようにしたいと思っています。その点、青はあまり主張しない色なのに、見れば見るほど深い色に見えてくるところが魅力。いつのまにか、自然と選んでいた色でした」。

 今後も形を第1に追求していくと言う百田さん。これまでにない新しい形を生み出し、勝負したいと意気込みます。匠の腕の見せどころである酒器や花器をはじめ、最近はもっと日常使いがしやすい食器の種類を増やしたことで、幅広いファン層を持つようになりました。こうして百田さんは人気作家への道を確実に歩み始めています。

(杉江あこ/意と匠研究所)

大きな樽の中に釉薬を流し入れ、複数の玉を入れて攪拌する ショールームの裏にある工房も整然としている

in blue 暁
所在地:佐賀県西松浦郡有田町黒牟田丙3499-6
TEL:0955-42-3987
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
URL:http://inblue-akatsuki.com/

製品紹介

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
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