「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
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坂本窯陶工房(さかもとかますえこうぼう)の坂本達也さんが挑むのは表情豊かな瑠璃釉の有田焼

坂本窯陶工房の作風と言えば、釉薬に呉須を入れて色づけする瑠璃釉(るりゆう)。ピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品の中でも異彩を放ちます。有田焼産地の中で唯一無二の作風に挑む坂本達也さんに、瑠璃釉が生まれたきっかけを伺いました。

坂本窯陶工房が生み出す深い青の瑠璃釉

瑠璃釉たっぷりとかかった坂本窯陶工房の坂本達也さんの作品を真上から見ると、深い青に引き込まれるような錯覚を覚えます。まるで外洋の水面から水底を覗き込むような感覚で、永遠の時間と無限の空間が器に広がっているようです。もちろん釉薬による表現なので、釉薬の厚みが生む奥行きには限界があります。しかし奥行きを超える力が瑠璃釉にはあるような気がします。瑠璃釉は、江戸時代につくられた古伊万里にも使われていた釉薬です。透明の釉薬に呉須を入れて、深い瑠璃色を器に現します。瑠璃釉を使っている陶芸家や窯元はありますが、唯一無二の作風としている作家は、現在、有田焼産地には坂本さんしかいません。

坂本達也さんと色釉との出合いは修行中の失敗作

坂本さんは元々、別の仕事に就いていましたが、20代初めに身体を壊して退職。「一生を掛けてやりたい仕事に就こう」と、地元の有田町に戻り、佐賀県立有田窯業大学校に入って有田焼の作陶技術を学びました。卒業後は父の紹介で、有田焼の青磁作家、梶原茂正さんに弟子入りしました。「口数の少ない先生でしたが、ちょっとした仕草や態度から、作陶に対する姿勢や情熱を学んだ」と振り返ります。運命は修行中に訪れました。釉掛けを手伝っていた際に青磁釉にどっぷりと浸かった失敗作の湯飲みを、登り窯にこっそりと入れて焼いたことがありました。焼き上がりを見た時、「湯飲みの底に厚く青磁釉が溜まり、鳥肌が立つほどきれいで感動しました」。

坂本窯陶工房を築いた時に3つの瑠璃釉を開発

独立して坂本窯陶工房を築く際、坂本さんは青磁を極めたいと考えましたが、「梶原先生の真似になる」と思い止まり、他の色釉を検討しました。思案にふけっていた時、父から言われた「有田焼で瑠璃釉の作品をつくっている作家はいない」という一言が決め手となりました。図録で古伊万里の写真を参照するなどして、瑠璃釉の色みを独自に研究。3種類の瑠璃釉の開発に至りました。1つは昔ながらの色みの「瑠璃」、1つは濃い色みの「深瑠璃(ふかるり)」、1つは酸化焼成をしてやや緑っぽい色みにした「暮瑠璃(くれるり)」です。

従来の有田焼とは趣が異なる染付

坂本窯陶工房では、坂本さんの奥様も一緒に作品づくりを行っています。奥様は絵付師として下絵付を担当。ただし通常の有田焼の染付とは趣が異なります。呉須で市松や七宝文様などの下絵付を施したうえに、瑠璃釉を掛けているため、染付の青と瑠璃釉の深い青とが絶妙なツートーンとなって現れるのです。他の陶磁器では目にできない独特の色合いに心引かれるファンは多いようです。藍染や染付などの工芸に代表されるように、元々、日本人は青を好む傾向があることも影響しているのでしょう。

ふるさと納税で入手できる瑠璃釉の器

意欲作として、唐津焼の土を使った器に瑠璃釉を掛けた作品もあります。坂本さんが親しくする唐津焼の陶芸家、梶原靖元さんに陶土を分けてもらったことから叶いました。有田焼に現れる鮮やかな瑠璃色とは異なる、味わい深い瑠璃色はまさに唯一無二。瑠璃釉の可能性の大きさを思い知る作品と言えます。坂本さんは瑠璃釉を使った挑戦を続けているものの、「普段使いの器をつくりたい」という考えは変わりません。シンプルな形の器だからこそ、どれも瑠璃色が冴えて見えるのです。瑠璃色は料理が映えるという点も魅力。坂本窯陶工房の作品は、ふるさと納税の返礼品でも手に入れることができます。

(文:杉江あこ/意と匠研究所、取材写真:藤本幸一郎、商品写真:ハレノヒ)

公開日:2018年10月8日
 
更新日:2020年6月10日

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