「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。

私のお気に入り

坂本窯陶工房の坂本達也さんが夫婦でお茶を点てて楽しむ唐津焼

坂本窯陶工房の坂本達也さんは、ピースウィンズ・ジャパンへのふるさと納税の返礼品にラインアップする商品開発にも携わった有田焼の陶芸家です。坂本さんが大事にする器の1つが唐津焼の井戸茶碗。時々、お茶を点てて楽しむというエピソードを伺いました。

坂本窯陶工房にお得意様が来店した後、お茶を一服

私は自身の研究のため「古唐津研究交流会」に参加しているのですが、同会で知り合い、個人的に交流を深めている唐津焼の陶芸家、梶原靖元さんから作品を何点か購入しました。特に気に入っているのが、唐津焼を代表する井戸茶碗です。これは高台に釉薬が縮れた状態の梅華皮(かいらぎ)が見られ、とても風格があって良いですよね。私は若い頃に茶道を習っていたことがあるので、時々、お茶を点てて飲むのが好きなんです。例えば坂本窯陶工房にお得意様がわざわざ菓子折りを持って来店された時など、商売がうまくいって気分も上がるので、いただいたお菓子をお供に「ちょっとお茶でも飲もうか」と、夫婦でお茶を点てて飲むことがあります。

坂本達也さんが秘蔵する他の唐津焼作品は食卓でも

夫婦でお茶を点てて飲む時、私が井戸茶碗を使い、妻が梶原さんの別の作品「粉引茶盌(わん)」を使います。普段、私は梶原さんの作品を食器棚の奥の方に隠しているのですが、時々、妻が副菜を盛って食卓に出すことがあります。梶原さんのもう1つの作品「高麗白瓷(はくじ)小皿」は8000円で購入したのですが、妻がすぐに割ってしまい、金継ぎに出しました。見事に金継ぎされて戻ってきたのは良いのですが、金継ぎ代金になんと2万円もかかってしまったというオチが付きました。ちなみに、2019年にプロダクトデザイナーの澄川伸一さんと開発した坂本窯陶工房の商品がふるさと納税にラインアップされていますので、ぜひご覧ください(談)。


※井戸茶碗
李朝時代につくられた高麗茶碗の一種で、16世紀頃に朝鮮半島から日本に伝来し、茶人が茶の湯で好んで用いた。わびた風情をし、びわ色の肌、梅華皮(かいらぎ)、竹節高台(竹の節を切り取ったような形の高台)などを特徴とする。以後、井戸茶碗は様式化し、日本のさまざまな焼物産地でつくられている。

(文:杉江あこ/意と匠研究所、写真:藤本幸一郎)

公開日:2018年11月20日
 
更新日:2021年1月19日

坂本達也(さかもと・たつや)

陶芸家

1972年佐賀県有田町生まれ。1990年佐賀県立有田工業高校デザイン科卒業。1995年佐賀県立有田窯業大学校にて円田義行に師事し絵付研修。1996年佐賀県立有田窯業大学校にて照井一玄に師事しロクロ研修。1997年梶原茂正氏に師事。1999年独立。2001年九州山口陶磁展第1位(経済産業大臣賞)、佐賀県美術展覧会入選。2002年西日本陶芸美術展入選、佐賀美術協会展入選(奨励賞)ほか入賞多数。2003年佐賀県立有田窯業大学校にて奥川俊右衛門に師事し特別ロクロ研修。