「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
つくり手

「人間性」を磨き黒牟田焼の新たな伝統づくりにチャレンジする丸田宣政窯の丸田延親さん

黒牟田焼_丸田宣政窯_丸田延親

黒牟田焼は黒釉薬、緑釉薬や大胆な刷毛目使いが特徴の質実剛健な焼き物です。その発祥は約430年前だといわれ、最盛期には40軒もの窯元が存在していたそうです。丸田宣政窯は、黒牟田焼の伝統を受け継ぐ数少ない窯元で、現在は父である先代の丸田宣政さんから引き継いだ丸田延親さんが当主を務めています。丸田宣政窯の素朴で味わい深い器の数々はピースウィンズ・ジャパンのふるさと納税返礼品でも好評です。人と人との繋がりを大切にしながら、黒牟田焼の新たな伝統づくりに挑む丸田延親さんにお話を伺いました。

幼少期からモノづくりが好きだった丸田延親さん

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黒牟田焼_丸田宣政窯_ショールーム

「幼い頃から父の背中を見て育ってきました」と語る丸田延親さん。日々器づくりに没頭する黒牟田焼の職人だったお父様の姿を見て育ち、物心ついたときにはプラモデルづくりが大好きで、焼き物づくりも大好きな少年だったそうです。小学生の頃には図工が得意で作品が特選に選ばれるほどだったといいます。「中学生の頃には、父の跡を継ぐことを意識していました」と黒牟田焼の継承者となることを意識したころを振り返る丸田さん。当初は高校を卒業したらどこかの窯元に修業に行き、職人への道を最短で進もうと考えていたそうです。最終的には大学進学という道を進むことになりますが、大学での出会いが丸田さんの作家としての可能性を大きく花開かせることになるのです。

丸田延親さん作品の「自然」を感じさせる造形美の原点は恩師との出会い

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黒牟田焼_丸田宣政窯_オブジェ

「大学進学を考えた当時は九州産業大学の評判が良かったので、そこに進学することにしました。ここで恩師である金ヶ江先生に出会いました」と恩師との出会いを振り返る丸田延親さん。それまでは、湯飲みや茶碗といった器づくりが焼き物の世界だという思い込みがあったそうです。ですが、恩師と出会ったことでオブジェ製作にも取り組むようになり、それが丸田さんの作風にも大きく影響しています。作風を確立していくまでは順風満帆とはいかず、お父様には「そんなもので飯を食えるか」と言われたこともあったそうです。なので、当時は「17時までは器づくりに取り組み、それ以降の時間帯で自分の作品をつくり続けました」と販売用の器製作とオリジナル作品の製作を両立させていたそうです。諦めずに公募展への挑戦を続け、30歳のときに日展に初入選することができ、それからはお父様も延親さんの作品を少しずつ認めてくれるようになっていきました。黒牟田焼の技法と「自然」を感じさせる造形美を融合させた丸田延親さんの作品は、日展入選14回と、数多くの公募展で実績を残すようになったのです。

「黒牟田焼の新たな伝統を生み出したい」丸田延親さんの志

黒牟田焼_丸田宣政窯_製作風景
黒牟田焼_丸田宣政窯_mutanoir

「ピースウィンズ・ジャパンさんの商品開発プロジェクトEDITIONでご一緒したプロダクトデザイナーの澄川伸一さんとのやり取りは非常に刺激的でした」と澄川伸一さんとの出会いを振り返る丸田延親さん。器は一つ一つろくろで製作するので、澄川さんが提案したフラットな形状をつくるのに苦戦したそうです。出来上がった作品を店の入り口に展示しているとお客さんの反応が良くなり、中にはワンセットまとめて購入していくお客さんもいると言います。「今回の商品開発の経験は、今後絶対にプラスになると感じています」とプロジェクトの手応えを感じているようです。「3年後、60歳になる年に百貨店、佐賀玉屋で個展を開催しようと考えています。佐賀での個展は10年ぶりくらいになります。そこに、今回開発したMUTA NOIRも出すつもりです。地元の人に黒牟田焼を再認識してもらうことで、次の世代につなげていきたいです」と丸田さんは、黒牟田焼の新しい伝統を生み出す挑戦を続けていく志を力強く語ってくれました。

黒牟田焼を通じて社会の役に立てる喜び

黒牟田焼_丸田宣政窯_丸田延親3
ふるさと納税返礼品_黒牟田焼_丸田宣政窯_フリーカップ

「最近非常にうれしかったことがあります」と笑顔で語る丸田延親さん。丸田さんは、武雄の神村学園で陶芸コースの授業を年10回担当されています。丸田さんの授業を受ける生徒さんの中にコミュニケーションが苦手で学校では誰ともしゃべらない男性がいたそうです。でも、「私の授業のときには休むことなく欠かさず通ってくれていました」とうれしそうに丸田さんは言います。学園の先生にも「彼が一番変わりました。丸田さんのおかげで彼があんなふうにしゃべるようになるなんて驚きです」と言われたそうです。「それを聞いたとき、とても感激しました。陶芸を通じて人の役に立てることは私の中で大きな喜びなんだと再認識しました。今後も、社会の役に立てるような活動を続けていきたいと考えています」。陶芸の力や活動の広がりへの喜びを丸田延親さんは噛みしめるように語ってくれました。

「人間性」を磨くことが黒牟田焼を未来につなぐ鍵

黒牟田焼_丸田宣政窯ショールーム2
黒牟田焼_丸田宣政窯_丸田延親4

「父が75歳のときに脳梗塞を患いました。それがひとつのきっかけとなり、自分自身の人生を振り返りいろんなことを考えました」。その頃から作家として人生を歩んでいくためには「人間性の発展」が必要不可欠だと考えるようになったそうです。「人とのつながりが人間性を磨く機会をくれますし、人が人を呼び、ビジネスとしても発展していくと思います」と丸田延親さんは言います。ここ数年は心身のリフレッシュのためにゴルフをする機会が増えたそうですが、それも人との出会いや人間性を磨く機会になっているようです。「ゴルフも焼き物と同じでうまくいったら面白く感じますし、うまくいかなかったら面白くないと感じるものです。ゴルフは自分自身と向き合うメンタルスポーツでありながら、グループで回る競技のため、うまくいかないときにどういう言動を取るかが重要視されます。まさに紳士のスポーツといわれるゆえんです」。丸田さんはゴルフでも多くのことを学んでいるようです。「あらゆる機会で人間性を磨き、信用と信頼を積み重ねていくことで子供達や孫たちの代に目に見えない資産を残すことができると考えています。そして、それが黒牟田焼を未来につなぐ力になると思います」。新たな黒牟田焼の伝統をつくり、次世代へとつなぐ挑戦を続ける丸田さんの目は実直に未来を見据えています。

取材写真:藤本幸一郎、商品写真:ハレノヒ

公開日:2021年7月28日
 
更新日:2021年7月28日

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