「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。

伝統工芸品と私

斬新な商品を数多く生み出す畑萬陶苑の畑石真嗣さんの心に残る大物人形

畑萬陶苑の代表取締役社長畑石真嗣さんは、素材や製造手法を徹底的に追求し、今まで世になかったような画期的な商品を開発しています。ピースウィンズ・ジャパンが手掛ける商品開発プロジェクトEDITION2021では、畑萬陶苑の人気シリーズ「モイスト」を世界的デザイナー澄川伸一さんがアレンジし、「爽/SOU モイスト」を開発しました。これまでの商品開発を振り返った中で、最も思い出深い一品のお話を畑石さんに伺いました。

雛人形の成功がきっかけとなり生まれた伊万里焼の新たな歴史を刻む「卑弥呼」

「以前、雛人形を磁器でつくったところ『今までにない商品だ』と各方面から言われ、大ヒットしました。今までなかったものをつくりヒットしたので、すごく面白かったです」。雛人形の成功をきっかけに「次はもっと大きいものをつくりたい」と考えたそうです。「何をつくろうか考えたときに平安、室町、飛鳥時代、弥生と歴史をさかのぼってみました。佐賀には吉野ケ里遺跡があるので、『卑弥呼だ』とひらめいたのです」。その後、佐賀県の新たなモノづくり補助金に応募したところ企画が通り、1,000万円の開発費を獲得。こうして歴史に残る一品、卑弥呼の開発がスタートしたのです。平成2年(1990)年頃のことでした。

チャレンジの成果を活かし伊万里焼の未来を切り開く畑石真嗣さんの飽くなき探究心

「卑弥呼の製作には苦労しました。大きな人形は磁器でつくると形がゆがんでしまうのです」と製作時の苦労を思い出して語る畑石さん。「まず、どういう土を使えばゆがまないのかを探りました。それから、焼成温度のテストを重ねた結果、通常よりも温度を下げることでゆがまずに焼き上げることができるようになりました」。試行錯誤を繰り返し、半年間の開発期間を経て誕生した卑弥呼は全国的に話題となり、高い評価を獲得したのです。「卑弥呼を開発するときに行った土の研究がベースとなって、ランプシェードや1mmの厚さにまで削った器など様々な商品を開発することができました」「難しい問題ほど燃えますね。それを乗り越えて新しいものができたときに喜びを感じます。そして、周囲の人達が『すごい』と思ってくれることがモノづくりの醍醐味です」。伊万里焼の伝統を継承し、新たな歴史を紡ぎ出す畑石さんの挑戦はまだまだ続いていきます。

公開日:2021年12月6日
 
更新日:2021年12月6日

畑石真嗣(はたいし・しんじ)

陶芸家

畑萬陶苑代表取締役社長
昭和30(1955)年佐賀県・西有田町生まれ。昭和49(1974)年佐賀県立有田工業高校卒業、その後県外にてエンジニアの職に。昭和58(1983)年畑萬陶苑に入社。平成2(1990)年四代目社長就任。昭和61(1986)年第10回全国伝統的工芸品展会長賞受賞。日本文化振興会国際芸術文化賞、欧州重要伝統文化大賞等受賞多数。日本伝統工芸士会伊万里有田焼伝統工芸士。日本文化振興会会員。ハプスブルグ芸術友好協会宮廷芸術会員。