「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
活動レポート
2022年4月28日

2021年度伝統工芸助成事業が終了!

公益財団法人佐賀未来創造基金との共同事業として行っている2021年度伝統工芸助成事業が終了しました。

今年度は8件事業者に、最大50万円を支給。2021年6月~12月末までの期間中、佐賀未来創造基金、審査員の方々と2回にわたって視察も行いました。助成事業者には、窯の修復やメンテナンス、商品開発にご活用いただきました。

各事業者の取り組みをご紹介します。

 

有田焼/渓山窯

取り組み:装置買い替え及び倉庫屋根改修工事

手書きの絵付けを得意とする、有田焼の渓山窯さん。器づくりに欠かせない機械の買い替えと生地倉庫の修理に活用されました。約50年前から使用していた機械は故障も多く、いつ使用できなくなってもおかしくないと言われていたよう。新しくなった装置で、安心して作業できるようになったそうです。また、生地倉庫として使用していた倉庫は、雨漏りがひどく、生地が使えなくなってしまうことも多かったそうです。そこで屋根の修理を行い、生地を無駄にすることもなくなったとお話しして下さいました。

 

有田焼/大慶

取り組み:新商品開発

現在は、商社として幅広い陶磁器を扱われていますが、元々は窯元の大慶さん。素材にこだわった商品プロデュースにも力を注がれています。今回はバターケースの開発費用として活用されました。使いやすさ、収納しやすさにこだわった形状で、食材を新鮮に保つために抗菌加工も施されています。もちろんバター以外の食材にも使用可能で、ハムなどの保存にもおすすめです。プラスチック製と違い、冷凍も可能でにおいも付きません。今後の展開が楽しみです。

 

唐津焼/川上清美陶房

取り組み:登り窯の修復

力強い作風の唐津焼作家、川上清美さん。全国に多くのファンがいます。助成金を、長年使用した窯の修復に活用されました。少しずつご自分で修理しながら使われていましたが、今回は本格的な修理のため専門家に依頼されたとのこと。5つの間からできた窯の1の間と3の間、煙突の修復を行いました。今までは、いつ窯が使えなくなるかと不安を抱えられていたそうですが、今後は安心して製作が続けられると喜んでいました。修復した窯を使ってどんな作品が生み出されるのか、楽しみです。

 

唐津焼/健太郎窯

取り組み:伝統工芸と福祉の連携事業のための窯製作

川上清美さんのお弟子さんで、唐津焼の次代を担う若手作家として注目される村山健太郎さん。料理に合う器をつくられています。唐津市鏡山の中腹にある工房は、海が見下ろせる抜群のロケーションです。今回は観光客向けに行っている唐津焼焼成体験プログラム用の窯の増設のために活用。増設により7団体客の受け入れが可能になりました。福祉事業との連携事業も計画中。作陶にとどまらない今後の幅広い活動に注目です。

 

唐津焼/鳥巣窯

取り組み:「茶箱で野点」体験イベントスペース整備

 

鳥巣窯、窯主の岸田匡啓さんは、静岡出身。大学で美術史を学んだ異色の経歴を持っています。岸田さんが生み出す作品は、伝統的な唐津焼の技法とモダンな雰囲気が融合しており、日々の生活で「取り入れたい!」と思うものばかり。助成金は、コロナ禍でも安心して行えるように、屋外の野点用イベントスペースの整備に活用されました。古来、旅先や野外などで行われている「茶箱」を活用したイベントです。今後はオンラインでのPR活動にも力を入れたいと意気込まれています。

 

肥前吉田焼/辻与製陶所

取り組み:新商品開発

嬉野の肥前吉田地域で、160年以上にわたり、代々窯を継いできた辻与製陶所さん。長い歴史をもちながら、伝統と新しい感覚を融合させた作風が特徴です。辻与製陶所が製作した手塩皿やなみだつぼは伝統的な柄を今風に描いていて大人気!助成金を活用して、冷茶ボトルの型を製作されました。製作した型は他の窯元でも共用する計画です。産地全体を盛り上げていきたいと熱い思いをお持ちです。

 

弓野人形/江口人形店

取り組み:窯の新設

弓野人形をつくり続け、今年で140年になる江口人形店さん。弓野人形は、神社の正月飾りや床の間を飾る置物などに使われてきました。江口さんが生み出す人形は、福助人形や鳩笛など古典的なものから、現代的なかっぱ娘などデザイン性に富んでいることが特徴です。助成金を活用して、古くなった窯を新設されました。新しい窯で、これからもたくさんの人形を製作したいと意欲満々です。コロナに負けない前向きな様子には私たちも元気をもらいます。

 

スタジオスポンジ

取り組み:シェアアトリエの設備管理

 

佐賀県で作陶に励む若手作家、菊本有花さん、田端修さん。菊本さんは、イギリスに留学をして陶芸を学びました。留学経験が活かされたモダンなデザインと手触りを楽しめる作品が特徴です。田端さんは、若いころから唐津焼への憧れを持ち続け、定年退職後に陶芸を学び始めました。手づくりの温かみが魅力の作品は、今後の進化が楽しみなものばかり。スタジオスポンジでは、使われなくなった工房をシェアアトリエに改築。助成金は、改築費に活用されました。自由に製作できる環境が少ない若手作家さんの製作やワークショップの場として活用する計画です。

※最近新たなメンバー澤村花菜さんが加わりました。今後の活動も楽しみです!

 

助成金を活用された事業者さんからは「自由度の高い助成金で、本当に助かった」「今後も安心して製作活動が続けられる」といった感謝の声や「今後はプロモーションに力を入れていきたい」「新作をたくさんつくりたい」等、将来への前向きな思いをたくさん聞くことができました。

助成事業がきっかけで、新しいことにチャレンジすると意気込まれている事業者さんを見ていると、私たちも改めて支援活動の必要性を認識させられます。

 

2022年も無事に公募が終了し、たくさんの事業者さんからさまざまな内容の応募がありました。4月中に審査を行い、今年の助成対象事業者を決定予定です。対象事業者が決定次第、このサイトで発表いたします。お楽しみに!