「ピースクラフツSAGA」は認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンが実施する佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクトです。
活動レポート
2023年2月20日

2022年度伝統工芸助成事業が終了!

公益財団法人佐賀未来創造基金との共同事業として行っている2022年度伝統工芸助成事業が終了しました。

2022年度は7事業者に、最大50万円の助成金を支給し伴走支援を行いました。春と秋の視察では、審査委員の方々からのアドバイスもあり、事業者さんにとって有意義な時間となったようです。

各事業者の取り組みをご紹介します。

 

◆武雄焼/閑古錐窯

 取り組み:電気窯の補修と棚板のクリーニング

国内外のレストランからの注文が多い閑古錐窯さん。作品の製作効率を高めるために助成を活用されました。電気炉は劣化していたふたを交換することにより、熱の漏れがなくなり、電気炉を多目的に使用することができるようになったそうです。棚板も整備することで釉薬ごとに棚板を替えられるようになり、釉薬の色飛びの心配もなくなったそうです。日本の食文化の一助になるような器づくりにこれからも精進したいと考えられています。

 

◆武雄焼/康雲窯

 取り組み:灯油窯の設置導入

伝統的な技法を継承しつつ、華やかさのある陶器づくりを得意とされる康雲窯さん。最近は、中国への輸出も始められたそうです。助成は灯油窯の設置導入に活用されました。灯油窯は比較的短時間、かつ少量の薪での焼成が可能で、環境負荷や体力負担も少なくて済むそうです。さらに焼成方法が豊富で新しい商品づくりにも有効とのこと。これからは窯の特性を活かした多彩な商品展開を目指し販路開拓にも繋げたいそうです。

 

◆肥前びーどろ/副島硝子工業

 取り組み:新商品開発(光彩硝子のさらなる改良・改善)

副島硝子工業さんは、現在、光彩ガラス商品の開発に取り組まれています。すでに商品化され、好評な光彩ガラスのアクセサリーに付加価値をつけたいと切子製作機器を導入されました。切子による文様を新たに入れることでガラス反射の効果が生まれ、より高級感が出たそうです。今後は、肥前びーどろなどにも切子を入れ、「肥前切子」としての商品開発も予定されています。さらに、体験学習の場として切子体験を考えられているそうです。

 

◆名尾手漉和紙/名尾手すき和紙

 取り組み:簾桁(すげた/紙漉き道具)製作

名尾手すき和紙さんは県の重要無形文化財に指定されている「名尾和紙」の技術を継承しています。今回の助成で、最近、依頼が増えている厚みがある壁紙用和紙をつくるための紙漉き道具「簾桁」を新調されました。今後、積極的にサンプル提案や販路開拓を進められるようです。また、道具づくりにも取り組みたいと考えられています。4月には新しい工房やギャラリーも完成とのことで、今後の名尾手すき和紙さんの活動が楽しみです。

 

◆伊万里焼/鍋島虎仙窯

 取り組み:窯の補修

鍋島虎仙窯さんは、伊万里焼の継承、振興に熱心に取り組まれています。助成では、これまで休止していた大型窯の整備を行われました。従来の窯の倍以上の商品が生産できるだけでなく、ガス代のコスト削減、環境負荷の軽減というメリットもあるそうです。生産性があがり、課題であった在庫切れの問題解決にも繋げることができたようです。また、OEMの受注にも成功し、新たな事業展開を考えたいと意気込まれています。

 

◆生地製造/廣田昇治

 取り組み:薪窯の修復と焼成

有田町でろくろを使った生地の製造をしている廣田昇治さん。現在の工房にある、長年使われていなかった薪窯の再生に助成を活用されました。焼成試験も無事に終わり、これからは、この薪窯でオリジナル作品の開発と販路開拓にも力を入れたいそうです。公募展への応募、個展開催にも意欲的です。窯の修復には、部材事業者だけでなく、周囲のいくつもの窯の協力、支援を受けられたようで、廣田さんは感謝されていました。

 

◆有田焼/文山製陶

 取り組み:新商品開発

業務用・家庭用の食器や骨壺等、幅広い商品を製造している文山製陶さん。現在、中国市場向けの納品が大きく増えているそうです。今回の助成では、中国輸出商社からの要望が複数あった宝瓶と湯冷ましの新規型づくりに活用されました。試作品ができたことにより、具体的な商談も進められるようになり、中国への輸出をさらに加速されるそうです。今後は、有田焼の技術継承のための企業環境整備にも注力されるようです。

 

 

助成事業がきっかけで、新しいことにチャレンジすると意気込まれている事業者さんを見ていると、私たちも改めて支援活動の必要性を認識させられます。

2023年度の助成公募開始は3月1日(水)を予定しています。詳細が決まり次第、当サイトでお知らせいたします。