ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
つくり手

唐津焼/岡本作礼

唐津焼/岡本作礼
(取材写真:藤本幸一郎)

アンテナを常に張り、新しい唐津焼を求める

油絵を描いて過ごした少年時代

 1989年に佐賀県唐津市にある作礼山の麓に築窯して以来、30年近くこの地で作陶に励んでいる唐津焼作家の岡本作礼さん。「昔から作礼山が好きでした。雑木林が多くて、湧水池が3つもあって、水が軟水でおいしい」とその魅力を語ります。特に春と秋は自然からインスピレーションを受けることが多く、「自然を通して、400年前の陶工と想いや時間を共有できるから良い。これが山の麓に住んでいるメリットですね」と話します。
 唐津市に生まれ育った岡本さんは、小中高校時代はずっと美術部に所属し、油絵を描いていた “美術少年”でした。「将来は芸術に関わる仕事がしたい」という思いを漠然と抱いていたところ、岡本さんの人生の師匠と言うべき地元の寺の住職から「唐津に生まれたなら、唐津焼に関わる仕事をした方がいい」と勧められ、唐津焼の道に入ったと言います。
 修行先は、人間国宝、十二代中里太郎右衛門の三男である中里重利さんの窯でした。「厳しい先生でしたが、窯場の環境になんとも言えない安心感があって好きでした」と振り返ります。そこで11年もの修行を積んだ後、独立しました。
PWJが佐賀県へのふるさと納税の返礼品に選んだ「黒高麗の縁飾り皿」。限定1個のため、現在は品切れ中 ロクロで成形した後に、手で生地を歪めて力強さを表現する

伝統はかつて最先端だった

 唐津焼作家の中でも、岡本さんの作品はどこかモダンな雰囲気を漂わせています。例えばピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が佐賀県へのふるさと納税の返礼品に選んだ「黒高麗の縁飾り皿」は、黒高麗特有のマットな質感と飴色がかった黒色、そして5枚の花弁を思わせるダイナミックな輪花形が見事に調和し、凛とした美しさを携えています。この皿に瑞々しい果物をはじめ、洋菓子やアイスクリームを盛ってもなぜか様になるのです。その要因を探ると、「伝統は、元々、それが生まれた時代には最先端でした。だから、今、昔の作品の写しをしても伝統にはならないというのが、自分の根っこにあります。アンテナを常に張り、新しいものを求めるようにしています」と話してくれました。
 そんな岡本さんの習慣は、美術館巡り。「東京をはじめ、どこの都市に出かけても、美術館へは必ず行きます。焼物はもちろん、彫刻、絵画、仏具なども観るのが好きですね。気になった展示品があると、これを唐津焼に置き換えると……という風に考えます」。こうした独自のアンテナと想像力が作品づくりに生きているようです。
 「焼物には焼物の美しい線や形があります。私は焼物のボディがピリッとしていないと嫌なんです。それが最低限の品格だと思うから。そこには自ずと作家の生き方や考え方が現れます。長い年月を経て残る焼物は、そういう品格のある焼物なんだと思います」と岡本さんは力強く語ります。
成形後に、高台をわずかに削って形を整える 成形には蹴ロクロも使用する。「蹴ロクロは自分の好みで回転速度を決められるのが利点。足と手を一緒に動かせるのが良い」と言う

最も好きな様式は朝鮮唐津

 現在、岡本さんは2カ月に1回の頻度で本焼成のための登り窯を焚き、精力的に作品づくりを行っています。1年に4〜5回は東京、関西をはじめ、全国の百貨店やギャラリーで新作を発表します。「唐津焼は、土、釉薬、形、焼成、これら4つの掛け算で成り立っています。時間配分で言えば、土や釉薬の素材づくりが8割を占めます。作家自身が素材を探して調達するのが基本で、藁は近所の農家から購入するなど、私は唐津市近辺で仕入れるようにしています」と説明します。
 まさに4つの掛け算によって、様々な様式があるのが唐津焼の特徴です。そんな中でも岡本さんが最も好きな様式は何でしょう?と尋ねると、「朝鮮唐津」という答えが返ってきました。「朝鮮唐津は1320度の高温で焼くので、丈夫で汚れにくいんです。だから普段使いに良い。唐津焼というと、壊れやすいとか汚れやすいというイメージを持たれる人もいるけれど、それは違うと思うんですよ」と岡本さんは話します。
 今後の展望を尋ねると、「私は60歳を迎えましたが、今後もアンテナを常に張って、新しいものに取り組みたいと思っています。定年はありません。30代の精神力で、一生つくり続けます。まだ新人のつもり」と頼もしく話してくれました。岡本さんの作品は、ピースウィンズ・ジャパン指定の佐賀県へのふるさと納税でも入手できます。ぜひ一度、ご覧ください。

(杉江あこ/意と匠研究所)

屋外で生地を乾燥させる。間にあるのは釉薬の原料となる藁灰 登り窯で一度に焼く作品数は500〜600点。「どの焼物を優先して焼くか」によって薪の焚べ方を決めると言う

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

ふるさと納税で伝統工芸を支援