ピースクラフツSAGA 佐賀の伝統工芸を支援するプロジェクト
活動レポート
2018年7月16日

弓野人形に現代アートで新風を吹き込む[江口人形店]

江口人形店を初めて訪れ、江口さんから弓野人形の歴史や製法について説明を受ける冨永氏

(写真すべて:下川一哉)

 

弓野人形×ボンドアート

 

 ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、佐賀の伝統工芸支援事業「ピースクラフツSAGA」の活動の一環として、20182月より商品開発を新たに開始しました。今回は、武雄市で土人形「弓野人形」を製造している、江口人形店の商品開発について経過を報告します。

 ピースクラフツSAGAのクリエーティブディレクターを務める下川一哉(筆者)は、江口人形店の新商品開発に際して、ゲストアーティストとして冨永ボンドさんを指名しました。冨永さんは、佐賀県多久市を拠点に、木工用ボンドを使った独自のボンドアートを制作し、国内外で評価される若手の画家です。江口人形店を営む熟練の江口誠二さんが作る人形は、ほっこりと可愛らしい点が特徴。江口さんの確かな技を生かしつつ、現代アートやファインクラフトに迫る土人形のオブジェを開発するため、今回は冨永さんのアート表現を取り入れながら開発を進めることとしました。

 

 

これまでに見たことのない招き猫を作ろう!

 

 201834日、冨永さんは江口人形店を初めて訪れました。弓野人形の製法や素材についての説明を江口さんから受けながら、冨永さんは新商品のイメージを作り始めました。江口さんと冨永さん、PWJスタッフ、下川の4者はこの場で協議し、新開発商品を招き猫に定めました。しかし、誰もが思い描く2頭身の招き猫ではありません。「誰もこれまでに見たことがない招き猫をつくろう!」。4者の合意を得て、冨永さんはスケッチを開始することとなりました。

 

 この直後、下川は冨永さんにこうお願いしました。「見た目にちょっと危うい印象に仕上げたい。弱々しい面やちょっと怖い面も表現してほしい」。土人形でこうした表現に挑むことは容易ではないでしょう。しかし、冨永さんならそうしたスケッチを描けますし、そのスケッチを基に江口さんならきっと土人形に具現化してくれると信じました。

 冨永さんが1週間後に描き上げてくれたスケッチは、まさに、これまでに見たことのない招き猫でした。冨永さんは修正を少し加え、スケッチを江口さんに渡しました。冨永さんはさらに三面図を作成し、細部の収まりも伝えました。江口さんの反応は、「これは難しい」でした。それでも、江口さんは、冨永さんのスケッチになるべく忠実でありながら、堅牢性を保ち、立体物としてどの方向から見ても自然に見えるよう、これまでに培った表現力と技で粘土型を作り始めました。

 

新たに開発する招き猫の素焼きの完成を待ちながら、冨永さんは江口人形店の既存商品にボンドアートを施すテストを行った

 

 

 

素焼きの招き猫がついに完成

 

 614日、粘土型を基につくった石膏型から抜いて焼成した素焼きの招き猫を確認するため、下川は江口人形店を訪れました。完成した素焼きは、まさにイメージどおりです。高さが24センチほどあって、ひょろりとした姿は、危うさを含み、端正な佇まいです。慣れない形状に挑み、困難を乗り越えた江口さんの表情からは、自信と誇り、さらに喜びが見て取れます。この素焼きの招き猫に、冨永さんは抽象的なアートワークを施し、招き猫を完成させます。冨永さんにも困難が待っているでしょう。

 さて、この招き猫の発表は20189月頃。ふるさと納税の返礼品にもラインアップする予定ですので、どうぞお楽しみに。

(下川一哉/意と匠研究所)

 

 

新規開発する招き猫の素焼きをつくるための石膏型が完成。江口さんの苦心作

県内の伝統工芸制作者の課題や方向性は同じではありません。しかし、ひとつひとつ手作りで作られる工芸品を「より多くの人に知ってもらいたい、長く使ってもらいたい」という想いは一緒です。その想いをカタチとして届けるため、PWJは今後、さまざまな活動に着手します。佐賀の伝統工芸をまだ知らない人々へ向けての情報発信、チャネル開発、生活様式や生活者の意識の変化に対応した商品づくり。海外市場を見据えた商品開発や展示会の開催も計画中です。
次のステージを目指す伝統工芸のつくり手を支援することにより、PWJは佐賀県の地域振興に貢献したいと考えています。

ふるさと納税で伝統工芸を支援